挑戦
俗に言うアトリエ派の設計事務所に移籍して30余年が過ぎようとしている。袖口を鉛筆の粉で黒く染め、設計図の裏書からホルダーを回し回し書き覚えた頃が懐かしく思われる。私はCADや3D化をいち早く取り入れたことを憂いている訳ではなく、むしろ3Dパースと現場打合せで『建築を生み出せないものか』と真剣に取り組み、今も考えている。このことは、ディティールの蓄積をしてきたという前過程があればこそだが…。
代表取締役 村上 雅郁
建築主から見た建築家
建築主から見た設計事務所について、考えさせられる出来事があった。それはある施設のプレゼンテーションをしていた時のことで運営方法などを交えて説明したところ、施設の経営者から『君らの提案は設計事務所を超えている』と感嘆されてしまった。おそらく、その経営者には『運営企画やソフトなどは建築主が自ら行うものであり設計事務所にはハードとしての要望のみを伝え、その通りに建築を仕上げてくれればいい』との観念があったのだろう。
職能
かつて村野藤吾氏は、しゃぶった指でタイルの目地をなぶり現場の職人さんに『どう?』と尋ねたという。そのエピソードを聞いて感じ入ったものだ。メーカーの指示書に締め付けられ、モルタルの掻き落としに至っては『色むらが無いように』と規格色の中から選ばざるを得ない時代。しかし、例えば規格の吹付き材であっても職人さんが少し手を加えただけで全然違う仕上がりになる。今では吹付け材の骨材や水の配分、吹付けガンの口径とガン圧、そしてガンの構え方や吹き付け方までも指示できるようになった。そういうものが新しいやり方なのか、そうでないのか分からないが、今後もさらに追求していきたい。
新たな創造物の発見
あるプロジェクトに必要な小物類を探すため、常に『何が売れるのか』を考えて輸入業に従事してこられた商社の方と一緒に欧州を周っていた時の話だ。
『建築家の視点で選び出された商品と、私達が選び出すものとは全然違いますね』
『これから創り上げようとする空間が既に見えているからですね』
それ以来、その方と共に新しい創造物を探す旅を続けている。
良い建築とは
とある昔の対談で、吉村順三氏が『建築とは?』と尋ねられたと時『納まりです。』と答えた話をを今も教えとしている。そんな中で今日、日本古来の『万物に神が宿る』といった考え方をもとに建築を見つめている。おそらくこれからも…。
Concept コンセプト
都市企画株式会社 アトリエHOMMA
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